*この記事はリクナビNEXTジャーナルに掲載されました。鶴薗さんはrebornのメンバーです。

「何かが足りない…。もっともっと頑張らないと」
「うまくいかないのは自分に欠点があるから?」
仕事をする上で、こうした息苦しさや辛さを感じたことは誰にでもあると思います。そんな時、どのように向き合ったらいいのでしょうか。この連載では「自分の弱みは、誰かの強み」をテーマに、自分らしく自然体で働く人の働き方ストーリーをリレー形式でお届けします。

今回は、ライフネット生命保険株式会社で働く岩田佑介さん(→)からのご紹介で、Flow代表 鶴薗奈美さんにお話をうかがいました。

鶴薗 奈美(つるぞの なみ)さん

鹿児島県指宿市出身。大阪在住。大手食品メーカーに就職。結婚後、派遣登録に訪れた会社にて、正社員にスカウトされ、以後15年間、人材業界に携わる事となる。派遣営業としてトップセールスを記録、総勢200名超の大型受託現場のプロジェクトマネージャーなどに従事する。2015年独立。成長期の企業の組織づくりやコンサルティングなどを行う。2018年11月28日株式会社Flow設立。副業・複業従事者へのお仕事紹介事業をスタート。

株式会社Flow
鶴薗奈美さんFacebook

ー新卒からのキャリアを教えてください。

新卒で大手食品製造会社に就職しました。結婚を機に退職して大阪に移り、中小の人材派遣会社、フランスの高級クリスタルブランドの営業を経験しました。外資高級クリスタルブランドの営業は楽しかったですね。百貨店に配属されましたが、売り上げ目標が全く達成できていなかったんです。現場を見ると、百貨店の外商社員が多数いる。「百貨店の社員さんにうちの商品を売ってもらおう」と思い、外商社員とのコミュニケーションを築くところから始めました。やがて百貨店の外商営業に同行させていただき、お得意先の顧客を一緒に回れるようになりました。お客様の望みを聞きながら、自分の商品だけではなくお宅に合う別ブランドの食器も提案したりもしました。そうすると、その別ブランドの営業さんがうちのクリスタル商品を売ってくれて…。数百万から数千万の商品を次々にお買い上げいただき、目標をクリア。外商社員の成績もアップ。独自の「営業チーム」の好循環が築けて、とても楽しかったですね。

ーそして派遣業界へ?

その後離婚をして、子育てとの両立も考えるとクリスタルブランドの営業の仕事を続けるのが難しくて転職活動を始めました。別の業界の仕事が決まったときに、その噂を聞きつけた以前の上司が「お前は絶対に、人材業界にいるべき人間やぞ」と人材派遣業界へ誘ってくれたのです。当時、楽しく仕事をしながらも結果を残していた姿を見ていたからだと思います。その後、大手の人材派遣会社に転職しました。

その会社では、人材派遣の部署に配属されましたが、お客様第一に考えて、派遣だけではなく、グループ会社や他部署の商品であるアウトソーシングや人材紹介も提案するなどしていたら、だんだんと大口の契約を頂くようになりました。私の業務が従来の働き方や組織の枠に収まりきらなくなり、私1人だけの部署が設置され役員付になったのです。「どうぞ好きにやってください」というような状態に(笑)。社長賞も何度かいただき、年間で最高10億円の売上がありました。

ー伝説の女、ですね。

でも私は「社長賞を狙うぞ」と思ってはいなかったんです。これは今回のテーマでもある、私の「弱み」の部分でもあるんですが、実は売上とか数字にあまり興味がないんです。営業というと普通なら、売上目標や今月の売上成績を把握していて、日々会社に報告したりしますよね。でも私は、数字を適当に報告したりして怒られていました。会議でも数字の部分は聞き流している感じで。もちろん利益を出すことは大事ですが、数字目標だけを追う行動に興味がありませんでした。

ー意外ですね。それなのにトップセールスを記録した理由は。

売上よりも、数字よりも、営業として大事にしていたことは、目の前のお客様が本当に望んでいる事は何かを引き出し、叶えていく事。派遣社員を活用してくださる企業だけがお客様ではなく、そこで働くスタッフさんもお客様。どちらかだけでなくどちらにも喜んでいただく提案をする事。これを徹底的に考えることでした。

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もう一つ、私が大事にしてきたのは「フロー(循環)」です。今、私が独立して会社名を「Flow(フロー)」にしているのも、私自身が良いフローを生み出すことにこだわりたいから。誰かだけが喜ぶのではなくみんなが喜ぶゴールはどこだろう。そのための好循環を生むために自分に何ができるかを考え続ける事です。 そう考えていたら、社内の部署や枠組みをどんどん飛び越えて、気づいたらトップセールスになっていました。
みんなが喜ぶ「快」に、その「解」がある。良い仕事の結果として数字や売り上げがついてくると思っています。

ートップセールスを記録した鶴薗さんが、売上を意識しないことは意外ですね。

トップセールスという結果を考えると、「誰かに勝たないと」とか、「頑張って売り上げをあげよう」というような、何かと対立するようなイメージが浮かぶかもしれませんが、私はそうは思っていません。

「誰かを排除するのではなく、みんなで創る。みんなで楽しむ。みんながつながって助け合って幸せになる」という仕事の仕方です。人はそれぞれ違っているけれど、それでいいという価値観。強みだけでなく弱みも含めて、ですね。

人の弱みは、悪い事として捉えられがちですが、私は弱みをネガティブに捉えていません。社会も会社も個性を持った人と人で構成されたユニークなパズル。ピースのある部分は出ていて、ある部分はへこんでいる。出ているところとへこんだところがパズルのようにうまくつながれるから、一緒に働く楽しさが生まれます。「違うって素晴らしい!弱みは誰かの強みで助けてもらえるようにできている。だから弱みは周りに頼って助けてもらったらいい」という感覚なのです。

ーそうした感覚、価値観を持つきっかけとなった原体験はありますか。

小学校入学前後ぐらいの時に読んだとある絵本が、とても印象に残っています。子どもたちが飛ばした風船が海に落ちて、イルカや魚がそれを食べて死んでしまう。子どもが風船を飛ばすことを止めれば、海の命が失われずに済む。まだ幼い私でも「ああ、こうやって、私は、海と川、世界とがつながっているんだ」と実感しました。自分は遠く離れた誰かと繋がっていて、目の前で選ぶ何かによって良い循環が生まれて誰かを幸せにできることもある。逆に、時間を経て誰かを不幸にすることもある。それなら、違う人同士が対立するのではなく、違いの中でつながって助け合っていけるということが腑に落ちたという原体験がありました。

もう1つ、私の父のことです。私の実家は田舎の小さな街です。そこで父が街の電気屋さんをしていました。家電販売の代理店で、優秀店として何度か表彰されたりしていました。父は「人とのつながり方」がすごく尊敬できる人でした。常にお客様のために何ができるかを考えていて、商品を売ろうとせず、逆にお客様が無理して商品を買わずにすむようにと、修理の腕を常に磨いていました。お客様のことも大好きで、誰かを悪く言う姿を一度も見た事がありません。他人との価値観の違いを楽しみながら会話をしていて。その中で自然に商品が売れていく。そんな父の恩恵で、私は父の娘というだけで、地域の人から可愛がってもらいました。だから私も仕事の中でフローが大事なのを実感しています。誰かが我慢を強いられて無理することは好きじゃなくて、「みんなが幸せ」というのがカギです。

ー300名のマネジメントを担当した時も、それを考えていたんですか?

ええ。150名のアウトソーシング現場のマネジメントを任された時、組織も利益も最悪の状態で引き継ぎました。契約先企業からも「改善されなかったら、別の会社を探す」とまで言われていた状態。しかもその時、私は同じ契約先企業の派遣営業として150名ほどのスタッフさんも抱えながらで、自分の選択でみんなの働く場所を奪ってしまったらどうしようと不安でしたし、マネジメントは初めてだったし、ここから「どうしたらいいだろう」と思いました。

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ただ、その時に浮かんだのが「みんなが幸せになるフロー」。「全員が幸せな状態を創る。そのために300人全員に手伝ってもらえる。人と組織を適材適所で循環させる」ということ。理想の職場をイメージしながら取り組みました。プレッシャーもありましたが楽しかった。なんせ、300人もの強みと弱みを組み合わせられる。一人ひとりと話をして、生活や人生、仕事の中で本当に何を大事にしているのか、今の組織の何がしんどいのか、本当はどうしたいのかを聞いて回っての組織改革は、非常にやりがいがありました。

ーフローと強み、弱みの組み合わせ。ダイナミックですね。一人ひとりが自分の弱みを知り、認めることも大事ですね。具体的にご自身の体験として弱み、強みをクリアーにしてきた体験は?

私は弱みを乗り越える必要はないと考えています。
例えば営業で新規開拓をするとき、通常はエリア全体をまんべんなく回りますよね。でも私はいったん回ってみて、自分と相性がいい顧客とだけ深くかかわるようにしました。自然体でいい関係を築ける相性という私の「強み」を生かしきるためです。この人のために何かしたいと自分が純粋に想えるお客様に集中すると、大好きな顧客のために何ができるだろうと想えるので、自分のパフォーマンスが最大限に引き上げられるという循環が生まれます。ここでも「フロー」ですね。

強みは結果を出そうと意識していなくても自然となされる結果。本当の強みは、あたり前すぎて、周りから褒められても「そうかな?」と自覚しづらい。ですから、自分の強み弱みを何も考えずにやっている人と、明確に意識して仕事に活かしている人とでは、当然、結果が違ってくると思います。

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そして、いよいよ核心ですが…、私の営業としての弱みはプレゼンです。営業も提案も大好きで得意で進んでやりますが、プレゼンはものすごく苦手です。しかも私は、お客様に大型案件を提案する事が多かったのでプレゼンの機会も多く、私がプレゼンをやりたくない、なんて本当は言ってられないんです。
それでもプレゼンは何というか…、面白く感じないんです(苦笑)。

一方的な説明には全然気持ちが動かなくて、言葉が出てこない。わがままなんですよ。すみません…。でも大きな案件の時にはプレゼンが重要なのは当然のこと。ですからプレゼンが上手で熱がこもる人にお願いします。もちろん、その人と何度も打ち合わせをして内容や想いを細かくすり合わせしたり、事前にクライアントにも紹介しておいて、「プレゼンはこの人がやります」という自然な流れを作ることも忘れずに。上司には、「いかに私がやらないほうが会社の為にメリットがあるか」を「プレゼン」して、別の担当をつけてもらっていました(苦笑)。

ーそれから大手人材会社から独立し、「Flow」を起業されて3年。どのようなお仕事をされていますか?また、今後の計画は?

企業の社内マネジメントやセールス代行、組織作りのコンサルをしてきました。これからは、副業などすでに本業を持っていて、2番目以降のお仕事を探している会社員やフリーランスの人へのお仕事マッチングの事業を立ち上げます。
マッチングでは、人材を求める会社には、そもそもどんな組織にしたいのか、社長のビジョンや理念も聞いた上で、その組織らしさを活かすための外部人材の活用を提案します。
組織は個人の集まりと考えた時、社員それぞれに生き方や大切にするものが違うのだから、社員一人ひとりを尊重した働き方を真剣に考えた時、それが会社の個性になり、他との違いが出て、その会社が選ばれる理由になると考えています。会社の弱みを自覚して、新しい人を採用してパズルをうめてもいいし、フローを活用して専門知識や経験を持っている外部人材にうめてもらってもいい、という考えです。

また副業したい人には、なぜ副業したいのか、本当はどんな働き方が理想なのかを聞いて、理想のライフスタイルに近づくお仕事を紹介することに拘っていきたいです。2番目のお仕事だからこそ、自分を仕事に合わせるのではなく、自分に仕事を合わせた選択がしやすい。

まずは、組織も個人もまずは自分の強みも弱みを知って自分のピースの形を自覚する事が一歩目だと思っています。しかし、企業も個人も面談をしていると自分の強みも弱みも知らない人がほとんどで、即答できる人はまれ。それを会話の中から引き出していきます。すると「これがやりたかった」と初心に戻れたり、「ああ、こういうことを手伝って欲しかったんだ」「これをやっているときが楽しい」と新たな発見をする人もいます。それぞれのビジョンや想いも大事にして、その人や企業の未来をマッチングで一緒に実現していく会社でありたいと思っています。

インタビュー・文:野原 晄 撮影:平山 諭
Posted by:Kana Igarashi

ゼロベース株式会社所属のUXデザイナー。産業技術大学院大学 履修証明プログラム Human Centered Design 修了。 IT業界でサービスデザイン、ユーザーリサーチ、UIデザインを行うかたわら、伝統芸能からビジュアルシンキングに至る各種ワークショップを実施。 複業で関わる株式会社オムスビでの肩書きは「結び手、Experience Designer」。